ー音楽をきくー【贈る言葉/望月敬明先生の巻14】

 音楽をきいたとき、音楽についてこんなふうに考えられないだろうか・・・。
 
きく者に「すーっと入らない音楽」、又「すーっと入ってすーっとでていく音楽」、更には又、「すーっと入ってあとで驚く音楽」といった3つの場合である。つまり、1の場合には感動をよびえないことは勿論だけれど、2のそれにしてもその価値はまだうすい。しかし3の場合のように、すーっと入ってしかも感銘を呼び、それが驚き、として残るような音楽、それが本物とみられないだろうか・・・。
 先頃テレビできいたホロビッツのピアノは、まさにそうした驚きをうみ、心に残る音楽であった。つまり、演奏につれて貌を現してくるその音楽は、私にとってその時実に素直に心に響いた。そして演奏が終りじっくり反雛してみるにつれ、今更ながら、その完璧といおうか、ある頂点に達したと思われるその音楽は、私の中で次第にふくらみ偉大さを痛感させ、それは”驚き”を生み感動を残すものであった。
 ここに本物があると思われる。
 将来あなた方が音楽を通して子供達に接しられる時、その音楽が子供達の心に素直にしみ通り、すぐにでなくとも、いずれかの時それがふくらみ育っていく契機となる程のものであってほしいと願っております。
 今日の会の盛会を祝します。

1972年3月17日
福井大学教授 望月敬明

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