ー見えていないものを見るー【贈る言葉/望月敬明先生の巻8】

 人びとがくらしの中で、政治、経済、教育、芸術、健康など、いわば人間の生活そのものについてどう考えていくか、どう対応していくか、つまりどう生きるか、といった時、政治も経済も教育も芸術も、自分にいちばん近いと思われる健康についてさえ、日常的にはついつい忘れがちにくらしていると思うのですが、それだけにたまには、そこをどう考えていこうか、などという多少ひま人めいたことを思ってみるのもいいかも知れません。
 それはせんじつめていってしまえば、まだ見えていないものをどう見ようとし、そしてどう見るか、そういう姿勢、そういう気の配りよう、そういう心の在りよう、言葉をかえていってみれば、とことんつくろうとする姿勢、とことん工夫してみる姿勢、そしてとことん捨てない姿勢、そこから自づと見えてくるものがあり、そこに新しい価値の発見があり創造があると思うのです。それは究極には生きるということではないでしょうか。
 そして私たち合唱人は、それを合唱という媒体に於いて試みようとしている、ということでしょう。仲間があるということはすばらしいことです。私たった一人では見つけえない価値も、仲間があるということにより、つまり多くの人達が力をあわせ、とことん試みることにより、次第にみえるようになり、やがては新しい響きを生みます。又一方、この姿勢は連盟の行事をとり行っていく上にも、よりよい方向づけの核となると思うのです。
 より一層の楽しい美しい合唱が響きますとともに、安定感のある行事が定着し、より発展していくことを願い、55年度のはじめの御挨拶といたします。

1980年6月8日
福井県合唱連盟会長 福井大学教授 望月敬明

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