ー会場をわかすー【贈る言葉/望月敬明先生の巻6】

 言葉で表現される詩に、当然その作者の言語観が、つまりその作者の表現についての確かな立場がみられるように、音で表現される音楽にも当然その作者の音楽観が、つまりその作者の音による確かな立場、音楽表現がみられるのは必然のことです。そして合唱曲がうたわれるという場合、その表現には、演奏者の言葉への確かなよみとり方、そして最終的には音への確かな把握、が要求されるのは理の当然でありましょう。
 ところで、その音楽観といい、又音楽表現といわれるものを確立させていくものは何なのでしょう。それはテニスのボルグや、角界に頭角をあらわす力士に対し、その道の周辺の人々がひとしく認める”研究熱心”な姿勢ということでしょう。それは一見、あまりにも平凡な答にもみえますが、その実態は想像以上に重く、過酷な、熾烈な、自分自身への限りない挑戦でありましょう。そしてその姿勢あってこそ、国技館はわくのでしょう。
 皆さんの演奏会も、その熱意が、あなた方の音楽観をより高め、音楽表現をより柔軟なものとし、その響きが会場をわかすほどに輝かしいものであってほしいと願うものです。

1980年12月6日
顧問 福井大学教授 望月敬明

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です