ーその時生きているー【贈る言葉/望月敬明先生の巻5】

 様々な演奏会のプログラムには素晴らしい贈る言葉が記載されています。このブログでは毎週一件づつ紹介していきます。音楽に寄せる気持ちは今も昔も変わりませんね!
皆さんが音楽会で出会った心に残る言葉 ご一報下さい!!

ーその時生きているー
 音楽が、同一の曲であっても、それぞれの演奏者によって異なった表現を生み、また、個々の人が同一曲をいつ演奏しても、その演奏はつねに同じでなく、異なった表現をみせるというのは、演奏者の個性の相違によるものであり、又個人の個性も常に変化をみせているということでしょう。そしてそれら演奏者が、いつもより深く広い個性的表現を求める努力を重ねるということは、創造を目指す芸術にとっては重要であり、又当然のことでもありましょう。
 ただ、この時それは、その過程において、つねに一種の冒険ともいえるものを伴うものであり、つまり、演奏はつねに冒険を伴っているといえるし、その成果を発表する演奏会もまた冒険を含み、その連続であるともいえましょう。
 そして、そうした冒険の連続は、演奏に新鮮味を与え、生きた演奏を生み、その時演奏者は、その音楽によって生きているのであり、聴く人もまた共に生きているといえましょう。
 第8回と続いたその冒険の連続の結果が、今日の演奏の場でどのようなかたちを示してくれるか、期して待つものです。
 最後に、特に今回の演奏会は、合唱コンクール初入賞の力をふまえた定演として一層の意義あるものと思われますが、皆様の御批判御批評を頂き、若き力がより一層の伸展をみます様、顧問として願うものです。

1969年12月20日
顧問 福井大学教授 望月敬明

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