ー「残心」ということー【贈る言葉/望月敬明先生の巻3】

 様々な演奏会のプログラムには素晴らしい贈る言葉が記載されています。このブログでは毎週一件づつ紹介していきます。音楽に寄せる気持ちは今も昔も変わりませんね!
皆さんが音楽会で出会った心に残る言葉 ご一報下さい!!

ー「残心」ということー
 剣道やなぎなたではよく「残心」ということがいわれているらしい。それは、試合が終ったと思うその瞬間にまで前の心を残すことであるらしく、動作が終った後のある時間にまでも気を抜かない、ということであろう。
 こうした心の構えは、音楽の演奏という一種の修行に近いことがらについても同じであろうし、その「残心」という心の構えをもつ演奏と、それのないものとは、その結果に大きな差異が生ずるものと思われます。つまり、全体的な演奏の態度に必要なことはいうまでもないわけですが、たとえば、音楽の終り方や、更にはフレーズのまとめ方など、音楽上の細かい点にまでも、この「残心」の心をもつように心掛けるということは、単に専門的な音楽の勉強そのもののためだけではなく、それらを支える精神的な面においても重要な役割を果すものと思われます。
 今夕の演奏が、各人にとって必ずしも最上の、しかも満足な結果と思えないのは当然であろうが、この発表会にいたる勉強の過程においては、音楽そのものの勉強とともに、より巾の広い経験が得られたことであろうし、そうしたことが発表会を開くことの重要な意義の一つでもあると考えられるので今後更に深く、そして巾の広い勉強をと期待しているものです。

1971年3月13日
福井大学音楽科 教授 望月敬明

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